基礎断熱工法と第一種換気設備はカビの危険性が高い

◆基礎断熱の床下に死角 (2021.03.09)

  埼玉県の木造住宅に住む40歳代の男性は、基礎断熱の床下合板に生えたカビが原因で夏型過敏性肺炎と診断された。築6年の住宅だ。夏型過敏性肺炎は発熱や咳、呼吸困難などを伴う夏に多く発症する肺炎だ。高温多湿の環境に広く生息するトリコスポロン(カビ)がアレルゲンとなる。男性の症状は重く、入退院を半年間繰り返した。男性が床下のカビに気づいたのは体調不良になったうえに、換気ガラリからカビ臭を感じたためだ。男性は家ではいつも床下につながる換気ガラリ付近に置かれた椅子に座っていた。そのため、ガラリから室内に入ってきたカビを吸い込んでいたと推測できる。住宅は2階の天井裏に第一種換気設備を設置し、基礎断熱の床下に換気ダクトを配していた。ところが、換気設備のフィルター清掃は入居依頼実施されておらず、ホコリだらけになっていた。フィルターが詰まって十分な換気性能を発揮できなくなっていたため、床下の空気の流れも悪くなり、カビが増殖した。建築した住宅会社がトラブル対応を怠ったため、代わりに建て主の相談を受けていた他の住宅会社の紹介で専門業者がカビ防除工事を手掛けた。男性はさらに基礎断熱をやめて、床下換気口を新たに設けた。この専門業者は同仕様の他の家でも床下のカビ被害を目にしていた。業者は「換気が全くできない基礎断熱の床下のカビリスクは言うまでもない。だが、機械換気設備があるからといって安心してはいけない」と注意を促す。住宅のカビリスクは夏や雨の多い季節に高くなる。しかし、基礎断熱の床下は一年中注意が必要だ。床下のカビの量が室内や外気よりも多くなる場合がある。宮城学院女子大学の本間義規教授は、基礎断熱を採用した住宅6棟で、床下のカビ浮遊濃度を冬に測定し、うち5棟で床下のカビ濃度が外気や室内よりも高くなった。夏は6棟とも床下のカビ濃度が最も低かったので対照的な結果だ。「外気のカビ濃度が低くなる冬に基礎断熱の床下がカビの汚染源になるリスクを示す
」と同教授は忠告する。

〜記者の目〜
床下が自然換気できない基礎断熱工法はカビやシロアリのリスクが非常に高まる。また、第1種換気設備(ダクト式)はフィルターの清掃は施主自身でもできるが、ダクト内部の清掃は専門業者ではなければ清掃することは絶対にできない。近年、高気密高断熱化が容易にできる第1種換気設備(ダクト式)を採用する住宅会社は多い。しかし、最大のデメリットは施主自身が完全なるメンテナンスができないことだ。最近ではダクトを使用しない第1種換気設備も販売されているので、第1種換気設備の採用を検討するのであればダクトレスを絶対におススメする。
基礎断熱工法に関しては、シロアリリスクの低い北海道や東北地方であれば採用の余地はあるが、それ以外の地域では、できるだけ床下換気は自然換気できる工法にした方が良い。基礎断熱は一年を通して床下が快適な温度で保てるため、シロアリにとっては一年中が天国のような空間だ。新築時に薬剤を使用しても、その効果は永久ではなく、一般的な防蟻薬剤の耐用年数は3年から5年程度と考えておいたほうがよい。近年、基礎換気口(通気パッキンなど)のない基礎断熱工法による床下のシロアリ被害が増加しているため注意をしてほしい。仮に住宅会社が第1種換気設備や基礎断熱工法は安心だと言うのであれば、それは何ら根拠がなく、製造メーカー側の説明を鵜呑みにした机上の知識である。