埼玉県川口市のハウスメーカー「アーバンエステート」の倒産で、首都圏を中心に496棟が工事代金を支払ったにも関わらず未着工や未完成のままになっていることから、埼玉弁護士会の有志らが6月2日、被害者救済弁護団を結成した。アーバンエステートの役員らへの損害賠償請求や刑事告訴を検討している。
弁護団によると、同社は派手なTVコマーシャルなどで急速に契約数を伸ばした。住宅建築では工事代金は数回に分けて支払うのが慣例だが、同社では「前金を多めに支払ってもらえば、工事代金を5%値引く」などと、顧客から着工前にに工事資金を集めていた。営業マンから総工費2000万円の5%を値引くと持ちかけられ、着工前に倒産に遭った施主もいるという。
事業拡大で経営が行き詰まり、54億8000万円の負債を抱え、東京地裁から今年4月に破産開始決定を受けた。496棟の工事代金75億3700万円のうち、35億2200万円が支払い済み。うち約4割の186棟で1000万円以上の前払い金が顧客から同社へ支払われている。
埼玉弁護士会は、被害者説明会を6月7日午後6時30分から川口市福祉センターで開く。問い合わせは、埼玉中央法律事務所(TEL048-645-2026 久保田弁護士)まで。
◆記者の目◆
昨年末からハウスメーカーの倒産が相次いでいる。静岡県浜松市のハウスメーカーで富士ハウスの倒産時には1282棟が未着工、未完成物件であり、そのうち7割が前払いを済ませている。アーバンエステート同様、富士ハウスもまた顧客への事前入金を急がせていた。倒産したこれら二社に共通する点は、前金を集めていたことと、住宅の完成引き渡し保証に加入していないことだ。完成引き渡し保証制度に加入していない住宅会社の倒産は、住宅の完成は保証されないため、顧客は泣き寝入りするしかなく、弁護団が介入したとしても、被害者の救済は困難を極めると専門家は指摘する。今後、国はこれらの被害者を出さないためにも、住宅会社の完成引き渡し保証制度への加入を義務付ける必要性があるのではないか。顧客もまた、住宅業者の選定は慎重に行う必要がある。TVCMやチラシ等は業者選定の判断材料にはならないことがこれら二社の倒産で明らかになった。