◆タマホーム  長期優良住宅 新たに5件を偽装 国土交通省が懲戒処分 (2012.06.26)

国土交通省は2012年6月25日、タマホーム(東京都港区)の社員を含む一級建築士6名の懲戒処分を発表した。
タマホームの石川県野々市支店の管理建築士だった吉田他起子一級建築士は、長期優良住宅で求められている耐震性能の基準を実際には満たさない戸建住宅5棟を基準に適合しているかのように偽装し、認定申請書を所管行政庁の金沢市に提出。2009年12月から2010年3月にかけて認定を受けていた。
同建築士による検査済証の日付改ざんなども発覚し、業務停止11ヶ月の処分を受けた。タマホームは、同建築士は2011年11月に退職しており、一連の行為は同建築士の独断だったとしている。

同社では、ほぼ同時期にも宮崎支店の社員であった一級建築士が長期優良住宅の認定通知書を偽装し、2010年12月に国交省から懲戒処分を受けている。その際も、同社は建築士の独断であったと責任を社員に押し付けた。
今回のケースは耐震偽装で、5棟の耐震性能について金沢市建築指導課は「長期優良住宅が求める耐震等級2を満たしていない」としている。また、5棟の住宅は一旦は長期優良住宅の認定を受けているため、完成後でも長期優良住宅法13条に基づいて耐震改修を行い、性能を適合させることで長期優良住宅の認定を回復できるという。

しかし、5棟のうち4棟の各施主は6月下旬時点で既に長期優良住宅の認定の取り消しを受け入れた。
長期優良住宅の建て主は所得税や固定資産税などの減免措置が受けられるが、今回のケースの場合、完成時から長期優良住宅の基準を満たしていないので、建て主側は減免された税額を追加納付しなければならない。タマホームは建て主が追加納付を求められた場合は、全額を自社で負担する方針だという。
また、建て主が住宅金融支援機構のフラット35Sを利用し金利優遇を受けていた場合には認定取消しにより、金利優遇が受けられなくなり、建て主側の住宅ローン負担が増大する可能性もある。

今回の偽装は、金沢市の職員が固定資産税の評価額を決定するため、建て主の住宅を調査したことがきっかけで完了検査済証の日付の改ざんが発覚。同市から報告を受けた石川県がタマホーム野々市支店に立ち入り検査し、長期優良住宅の偽装がわかった。
吉田建築士は長期優良住宅の書類の不備などから、認定手続きに手間取っていた。長期優良住宅は認定が下りなければ着工できないため、吉田建築士は認定が下りたかのように見せかけ工事を着工させた。
しかし、実際には認定は着工後に下りた。うち一棟は完成後の申請だったことも後の調査で判明した。

<記者の目>
タマホームによる度重なる長期優良住宅の偽装事件。会社の経営体質、社内の管理システムに根本的な理由があるように思えてならない。事件が発覚する度に社員に責任を負わせ、会社は他人事のように淡々と説明し、顧客に対して十分な責任を果たしていない。同社は顧客の利益よりも社内の利益を優先しているように見受けられる。タマホーム発足当時、悪天候にも関わらず新規オープンした福岡の住宅展示場に来場したお客様を見て涙したというあの当時の玉木社長はどこへ。
同社は最近まで坪25.8万円など、住宅価格を安く見せかけ、実際には坪50万円以上(延床計算)の住宅を販売している。ネットを中心に誇大広告だとの批判が集中し、現在も「タマホーム欠陥」や「タマホーム訴訟」などのキーワードでの検索数が多い。これらの批判や指摘を真摯に受け止め、同社には早急な体質改善が求められている。

◆アキュラホーム  耐火性能不足が383棟 (2012.06.06)

国土交通省は5日、住宅メーカー大手のアキュラホーム(東京)が、準耐火建築物として施工した383棟について、適切な施工がされておらず、耐火性能を満たしていない恐れがあると発表した。
同省では建築基準法違反の疑いがあるとみて調査している。

383件の内訳は、東京都226棟、神奈川県42棟、大阪府42棟、埼玉県23棟、兵庫県23棟、愛知県10棟、広島県3棟、千葉県2棟、調査中12棟となっている。

国交省によると、耐火性能不足の疑いがあるのは上記の通り8都道府県で同社が手掛けた住宅。
耐火ボードを設置する際に、隙間なく施工する必要があるにも関わらず隙間がある状態で施工がされていたという。建築基準法に基づいて認定された施工方法で施工していない可能性もある。

383棟の住宅で問題が発生している点に業界関係者はこう話す。
「こんなに多くの違反が、単なるミスとは考えにくく、設計段階で問題のある施工方法を指示していた可能性が高い。悪く言えば手抜き、コスト削減のための住宅仕様にしていたと疑われても仕方がない。これらの問題が発生した原因を早期に明らかにすべきだ。」
相次ぐ大手ハウスメーカーの偽装や法令違反に大手神話はもろくも崩れさり、大手ハウスメーカーからのユーザー離れが一層深刻なものとなりそうだ。

◆セキスイハイム  長期優良住宅の認定書偽装 千葉市など3市が告発へ

千葉・習志野・佐倉の3市は、税制上の優遇措置が受けられる「長期優良住宅」の認定通知書を偽装したとして、有印公文書偽造・同行使などの疑いで容疑者不詳のまま3月26日に千葉県警に告発していたことが5月7日、明らかになった。
セキスイハイム千葉支店の社員が工期短縮を図るために関与したとみられている。
同時に確認検査機関の建築確認済証を偽装したケースも発覚。耐震性など建物自体に問題はないというが、一部では是正工事の協議も進められている。
同社は1月19日付で、偽造を認めた社員(30)を懲戒解雇した。

千葉市建築指導課によると、2010年10月に同市若葉区で着工した戸建て住宅において、セキスイハイムの社員は長期優良住宅の認定通知書を偽造し市に提出。
認定には市の審査が必要だが、社員は別の建築物で使用した認定通知書の公印部分などをコピーし、新たに別の建築主の氏名や住所などを記入したという。

この社員は建築確認申請の書類についても民間検査機関に提出したと虚偽の報告を行ったといい、現在、建築主との間で是正工事についての協議が進められている。
なお、各建築主は、いずれの偽造について、一切知らされていなかったという。

習志野市や佐倉市でも、長期優良住宅の認定書や宅地造成時の検査書類をめぐって相次いで偽造が発覚している。
このほか、市原市では市街化調整区域に開発許可がないまま民家を建築し、民間の確認審査機関の確認済証を偽造した都市計画法違反、建築基準法違反の疑いが持たれている。

同社は、読売新聞社が行った取材に対し、「納期の関係もあり本人に焦りがあったようだ。事態を重く受け止めており、4件の顧客には経緯を説明している。今後、補償も含めて対応する」としている。

2010年に起きたタマホームの長期優良住宅認定書偽造事件など、大手ハウスメーカーによる偽造事件が全国で多発している。
業界関係者によると、大手ハウスメーカーによる偽造は利益優先の経営体質による無理な工程管理が最大の要因だと指摘している。

大手ハウスメーカーによる過去の事件
2006年 耐震強度偽装(一建設)
2007年 構造計算書偽装・コンプライアンス違反(積水ハウス)
2008年 建築確認無認可着工(積水ハウス)
2009年 建築確認関係の公文書偽造(積水ハウス)
2010年 長期優良住宅認定通知書偽造(タマホーム)
2011年 施工建物内に不法投棄(積水ハウス)
2012年 長期優良住宅認定通知書・他建築関連書類偽造(セキスイハイム)

◆太陽光パネル撤去の判決

隣家の太陽光パネルによる反射光被害を理由に同パネルの撤去を求めていた裁判で、横浜地方裁判所は4月18日、原告A氏の訴えを認める判決を下した。
裁判所は被告B氏に、民法の建物所有権の妨害排除請求として北側の2階屋根に設置されている全パネル(計12枚)の撤去を命、更にB氏と住宅を建築したタマホームに不法行為に基づく損害賠償責務として連帯で22万円を支払うよう命じた。
タマホームは5月2日控訴したが、B氏は控訴しなかったので、B氏の判決は確定した。

B氏宅は自宅の建替えの際に、太陽光発電を設置。計19枚のパネルのうち、南側の屋根に7枚、北側の屋根に12枚を載せた。しかし、北側に載せたパネルに太陽光が反射し、A氏宅の南側の居室に反射光が射し込むようになり、A氏は眩しさで目が痛むようになった。
A氏が隣人のB氏に被害を伝えたところ、B氏宅を建築したタマホームから文書による回答があった。
パネルは撤去する、A氏宅の窓ガラスに防眩フィルムを貼る、カーテンを取付る等の案が示された。しかし、A氏は納得できず、裁判に持ち込んだ。

第一回公判は2010年11月だった。当初、裁判所は和解を探ったが、タマホーム側からの和解案にA氏が難色を示し、他の案もB氏が拒んだため、一年間の話し合いを続けたが和解には至らなかった。

裁判の争点は、反射光が受忍限度を超えるか、住宅会社は被害を予見可能か、損害賠償額の3点だった。
反射光の受忍限度についてA氏は、射し込む輝度は反射していない時に比べ、最大で4000倍になると主張。B氏側は損害が具体的でなく、反射光も一時的若しくは部分的であると反論した。裁判官はA氏側の証拠資料と自らがA氏宅にて眩しさの状態を確認したことを踏まえて、受忍限度を超えるとした。

住宅会社は損害を予見可能であったかについて、タマホームは、北側にパネルを設置することを規制する条例や法令はなく、業界内でも同様の例はないことから、予見は不可能と主張した。しかし、A氏は住宅会社なら容易に予測できると反論し、裁判官はA氏側の訴えを支持した。

損害賠償については、A氏は、平穏な生活を妨げられたうえ、誠意のない対応で精神的苦痛を受けたとして、一人あたり、弁護士費用も含めて110万円を求めた。裁判官は、書面で回答しており、不誠実とはいえず、被害は一定の時間と場所に限られるので、損害賠償額は一人あたり、弁護士費用も含めて11万円が妥当であるとした。

パネルメーカーの中には北側に太陽光パネルを設置する際は、隣家の同意を得るよう求めているところもある。いずれにしても、太陽光パネルが反射トラブルを起こす事態を想定し、効率的に発電できるように計画することが施工者に求められるのではないだろうか。タマホームが控訴したことで、今後の裁判の行方に業界全体が注目している。

◆タマホーム 今度は長期優良住宅での偽装発覚! 度重なるタマの偽装に業界は唖然

国土交通省は2010年12月13日、一級建築士7人に建築士法に基づいて同月7日に下した懲戒処分の内容を発表した。うち1人は長期優良住宅関連の最初の処分事例となった。
この建築士は大手住宅会社の「タマホーム(東京都港区)」宮崎支店に設計担当社員として勤務していた群司和徳氏(49)で、業務停止11カ月の処分を受けた。
タマホームは主力商品である木造住宅「大安心の家」などに、長期優良住宅の認定を受けることが可能な標準使用を採用していたが、建築主が希望した場合のみ認定を申請している。
タマホームは10年3月、宮崎県内の「大安心の家」10棟を対象に認定通知書を偽装し、別の6棟については09年末から10年にかけて認定申請に必要な書類である適合証を偽装した。この偽装行為を10年7月に宮崎県が把握したことで今回の処分を受けるに至った。
補助金や優遇税制など、長期優良住宅のメリットを住宅会社が利用するには、建築確認申請とは別の手続きで特定行政庁に認定を申請する必要があり、認定申請に必要な書類である適合証を得るには登録住宅性能評価機関への技術的審査も必要だが、タマホームはこの2通りの申請手続きを怠った。
宮崎県建築住宅課の担当者は、「刑事告発も視野に入れて宮崎県警と相談している」と語った。
偽装の対象となった16棟の住宅は既に完成しており、引渡しも済んでいるという。
タマホームは、建築主への謝罪や、建築主から受け取った長期優良住宅の申請に必要な費用を返金したという。
被害に逢った建築主は、自身のブログで「長期優良住宅仕様の家でありながら、認定が取得できていないので長期優良住宅とはならない。申請費用の返金のみでは納得がいかない。」と語っている。
偽装を行った郡司氏は10年秋に退社した。

タマホームは2007年にも実際には注文住宅日本一ではないにも関わらず、テレビCMや折込広告で「2年連続日本一」と大々的に表現し、公正取引委員会から排除命令を受けている。

≪記者の目≫
一社員の偽装として本件を終わらせようとする会社の姿勢に違和感を感じた。16棟もの偽装をしておきながら、業務停止11カ月の処分は被害者の立場からすると甘いという他ない。
実はタマホームは長期優良住宅の補助金対象の会社ではないので公的な場で長期優良住宅の適合証を使用する機会が殆どない。そもそも長期優良住宅の認定は補助金を受けられる建築主以外は公的な検証がされないため、偽装は他にも多くあるのではいかと疑ってしまう。
また、この事件について新聞各社や民法各局は全くといってよいほど報道をしていない。タマホームはマスコミ業界へ多額の広告宣伝費を投入していることから各社とも報道を控えているのではないだろうか。業界にとっては姉歯建築士の耐震偽装事件以来の大事件である。
いずれにしてもタマホームは誇大広告や消費者にとって紛らわしい価格表示を止めるべきだ。

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千葉県南房総市で住宅建築を手掛けるエイトホーム(有限会社八幡工務店)の山口尚宏さん(35)がこのほど地域新聞の一面を飾った。昨年6月に施行された長期優良住宅普及促進法。欧米各国に比べ平均寿命が短いとされる日本の住宅の長寿命化を図るためにつくられた新法。長期優良住宅は技術的審査に合格し、都道府県の認定を受ける必要がある。申請書類の多さから地場工務店は敬遠しがちだが、山口さんは昨年6月以降、この長期優良住宅に取り組んできた。申請サポート機関等を利用することなくすべての書類を一人で作成。技術的審査に合格した後、千葉県の認定を取得した。千葉県住宅課によると長期優良住宅の申請数は大手メーカー、次いで県内の中規模ビルダーが最も多く、地場工務店の申請は徐々に増えているものの、まだまだ少ないと言う。山口さんは中央工学校建築設計科を卒業後、木造軸組系ハウスメーカーに勤務した後、父の経営する工務店を継いだ。「ハウスメーカーも、実際の家造りに携わっている方は地場の職人さんたち。大手に依頼した場合、建築費の大半は施主の住まいとは関係のない宣伝広告費や住宅展示場の維持費、営業マンや事務方の人件費に。高額な家と良い家は必ずしも比例しない。大手も中小も技術力に大差はなく、家造りは地域の気候風土を熟知した地元業者が建築するのが理想。地場の工務店も時代と共に学び、大手には真似のできない特色ある家造りをしてほしい。」と同業各社にエールを送った。

防災科学技術研究所と一般社団法人「木を活かす建築推進協議会」は10月27日、兵庫県にある大型震動台E-ディフェンスを使って軸組工法の3階建て木造住宅の実大倒壊実験を行った。
長期優良住宅の認定基準である耐震等級2をベースに許容応力度計算(ルート1)を行った建物(試験体1)と、耐力壁が耐震等級2を満たすが接合部設計を存在応力に基づいて行った建物(試験体2)の2棟を震度6強の地震波で揺らした。試験体2は振動の早い段階で足元の接合部が外れ倒壊状態となり、試験体1は実験終了間際に倒壊した。
予想では試験体1は倒壊せず、試験体2が倒壊すると考えられていた。

実験は2004年、土木研究所(茨城県つくば市)の振動実験台を使い、阪神淡路大震災の際に神戸海洋気象台が観測した地震波を振動台で再現したもの。建物は実物大の木造住宅で、壁量計算により、性能表示制度における耐震等級1(耐震要素が建築基準法同等)をギリギリ満たすよう設計された。下記の写真はその結果である。

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写真左手前の通し柱が1階と2階の間でくの字に折れているのがわかる。実験上の都合で試験体内部には倒壊防止ワイヤーが張り巡らせてある。このため変形はこの程度で済んでいるが、本来であれば建物は崩れ落ちていたはずだ。
実はこの試験、関係者以外非公開で耐震等級1の建物で実験(上記写真)が行われていた。「等級1」の実験は「倒壊の危険がある」という理由から極秘に実験が行われていたのである。公開実験が行われたのが2006年の「等級3」(耐震要素が建築基準法の1.5倍)の試験体を用いての実験だ。この結果、「等級1」と「等級3」とでは全く揺れ方が違うことがわかった。「等級1」は揺れ幅が明らかに大きかった。「等級1」はJMA神戸波で最終的に12度も変形、柱が接合部で折れてしまった。一方、「等級3」の変形角は2.2度。単純にいうと、「等級1」が倒壊したのは「変形角が大きくなり過ぎたから」だ。今後、住居の新築を建築される方は最低でも「耐震等級3」で建築するようにしてほしい。
(一部NKHB記事より)

住宅ローン減税に落とし穴!?
『住宅ローン減税 最大500万円控除』、『長期優良住宅 住宅ローン減税最大600万円控除』という記事を見て、「えっ?そんなにお金が戻ってくるんだ〜」と思っていませんか?
住宅メーカーの営業マンは「今なら長期優良住宅にされますと600万円も控除になります!」とお客様を口説いてきます。 しかし、本気でそのような事を口に出している営業マンは無知です。無知な営業マンのいる住宅会社ほど信用できないといっても過言ではありません。
そもそも10年間で500万、600万の税金を納めている人が周囲にどれほどいるのでしょうか。住宅ローン減税はローン残高と所得税の額によって異なり、全ての人に500万、600万が戻ってくるわけではありません。
『最大500万円』、『最大600万円』、最大という言葉の罠がそこに存在しているのです。

例:住宅ローン残高 3000万円 

①一般住宅の場合
1年目の控除額=30万円が限度 ※年末残高×1.0%
※「年末残高×1.0%」若しくは「年間所得税+年間住民税」のどちらか低い額が控除額

②長期優良住宅の場合
1年目の控除額=36万円が限度 
※「年末残高×1.2%」若しくは「年間所得税+年間住民税」のどちらか低い額が控除額

最大500万、600万が戻ってくる人は10年間毎年50万円以上の納税額があり、ローン残高が10年後も5000万円以上残っている場合です。夫婦と子供2人の家庭の場合、借入する方(例えばご主人)の年収が約900万円以上、年利3%として35年返済で6200万円以上の住宅ローンを借りる必要があります。
また、一般住宅も長期優良住宅も大半の方は住宅ローン控除額が変わらない可能性があります。
国や住宅会社は全員が500万、600万還元されるような安易な表現は直ちに止めるべきです。

埼玉県川口市のハウスメーカー「アーバンエステート」の倒産で、首都圏を中心に496棟が工事代金を支払ったにも関わらず未着工や未完成のままになっていることから、埼玉弁護士会の有志らが6月2日、被害者救済弁護団を結成した。アーバンエステートの役員らへの損害賠償請求や刑事告訴を検討している。
弁護団によると、同社は派手なTVコマーシャルなどで急速に契約数を伸ばした。住宅建築では工事代金は数回に分けて支払うのが慣例だが、同社では「前金を多めに支払ってもらえば、工事代金を5%値引く」などと、顧客から着工前にに工事資金を集めていた。営業マンから総工費2000万円の5%を値引くと持ちかけられ、着工前に倒産に遭った施主もいるという。
事業拡大で経営が行き詰まり、54億8000万円の負債を抱え、東京地裁から今年4月に破産開始決定を受けた。496棟の工事代金75億3700万円のうち、35億2200万円が支払い済み。うち約4割の186棟で1000万円以上の前払い金が顧客から同社へ支払われている。
埼玉弁護士会は、被害者説明会を6月7日午後6時30分から川口市福祉センターで開く。問い合わせは、埼玉中央法律事務所(TEL048-645-2026 久保田弁護士)まで。
◆記者の目◆
昨年末からハウスメーカーの倒産が相次いでいる。静岡県浜松市のハウスメーカーで富士ハウスの倒産時には1282棟が未着工、未完成物件であり、そのうち7割が前払いを済ませている。アーバンエステート同様、富士ハウスもまた顧客への事前入金を急がせていた。倒産したこれら二社に共通する点は、前金を集めていたことと、住宅の完成引き渡し保証に加入していないことだ。完成引き渡し保証制度に加入していない住宅会社の倒産は、住宅の完成は保証されないため、顧客は泣き寝入りするしかなく、弁護団が介入したとしても、被害者の救済は困難を極めると専門家は指摘する。今後、国はこれらの被害者を出さないためにも、住宅会社の完成引き渡し保証制度への加入を義務付ける必要性があるのではないか。顧客もまた、住宅業者の選定は慎重に行う必要がある。TVCMやチラシ等は業者選定の判断材料にはならないことがこれら二社の倒産で明らかになった。